「第2回一宮の海を考える集い」を終えて

2010.4.28 8:40 | コメント(4)

「九十九里浜はいずれ“消滅”する」を考える

一宮の海岸の砂浜はいずれ消滅する。その消滅速度を遅らせる工事が現在の侵食対策工事だ。専門家は、消滅までの歳月は蓄積されたデータをもとにしたシミュレーションでわかると断言し、砂浜がなくなったらサーフィンどころの話ではないと説明する。こうした専門家のデータを絶対と信じ一分一秒でも長く砂浜を消滅から守るために、サーフィンの世界大会が開かれる質の高い“波”を放棄してプアな波やウミガメが卵を産まない砂浜を選択するか、それとも砂浜がなくなるかもしれないがある程度自然の再生力を信じて横堤に替わる新しい工法を模索するのか。

九十九里浜“消滅”に対する現状を知らされた住民は、侵食対策の思想の違い「海外は“自然のままに”」「日本は“保全”」とした選択を迫られるにちがいない。どちらを選択するにしても、自然は人間の計算通りにいくのだろうか。

4月10日土曜日の午後、一宮町の中央公民館で開催された町主催の「第2回一宮の海を考える集い」には大勢の人々が詰めかけた。太東漁港までの九十九里最南端の砂浜わずか6kmの間に10基もの作りかけのヘッドランド(突堤)を有する人口1万2、3千人のこの町は、都心からのJRの便が良いこと、そして何より海と緑という自然環境があることから、サーファーや週末別荘に来る人々に加え、ここ数年来、移住者も急増、その経済効果は町とって重要である。そんな中、海岸侵食対策として、波乗りの聖地とされるゾーンの一角に工事のメスが入れられたことが発端となり、約2か月前、口コミとインターネットを通じて多くの人々の署名運動として工事への疑問の声が上がったことは皆さんの記憶に新しい所だ。なお、この日までに「一宮の海岸環境を考える会」に全国から寄せられた署名者の数は4万4千人を超えた。

一宮の海岸の侵食対策工事を主体的に進めて来た県としては、これまでも公聴会などで説明を行ってきたが、住民やサーファーらが今回明確に自身の問題として受け止めて行動を起こし声を上げたことに戸惑いを感じながらも、「歓迎する」との姿勢のもと、地元一宮町が主宰という形で学識者を招き、今回の説明会が開催された。

当日、説明・質疑応答を行ってくれたのは、宇多高明氏(財団法人土木研究センターなぎさ総合研究室長)と清野聡子氏(九州大学院工学研究院環境都市部門潤教授)。それぞれ海洋建築工学、生物学をベースとした河川海岸保全学の専門家で我が国の侵食問題対策・研究の第一人者として以前から九十九里浜の侵食問題に取り組んできた方々だ。宇多氏のシミュレーションでは、「九十九里浜はいずれ消滅する」との結論で、その対策とした未だ完了しない10基のヘッドランド工事については、計画が始まった当時の科学レベルでは最先端であった、また、侵食速度を遅延させることに寄与してきた、との説明がなされた。また、質問・意見を有する全参加者に対して丁寧に回答を行い、予定の時間を1時間もオーバーしての質疑応答となった。

これからの大きな問題、それは外から砂を持ってきて侵食分を補給する「養浜」事業が、仮に一時的にうまくいったとしてもそこにかかる膨大な費用を考えると永久的に続けることは到底不可能、また、10基のヘッドランドで切り分けられたエリアの全てを救済し素晴らしい海岸として保全して行くことは困難で、どこに限られた資金を投入して行くのか絞りこむ必要がある、とのことで地元住民にとっては苦渋の選択となることは明らかだ。

但し、「侵食を防ぐ方法が全くないわけではない、地域住民がよく考え、選択すべき」と宇多氏はいう。例として、戦後広大な砂丘地帯だった一部を松林とした防砂林地帯は、今もある程度広く残されており、ここを護岸工事に活用できれば望みはあるかもしれない、と述べた。また、海にいつも入っているサーファーや漁師は表面から見える姿だけでなく海の中の変化にも敏感な筈、また、海岸線の変化も写真に撮って集積して欲しい、ウミガメなど生態系への影響も地元の専門家の協力のもとデータとして示すことが重要だ、と清野氏は訴えた。最後に、宇多氏、清野氏の2人は、大勢の地元住民やサーファー達がこの日こうやって集まり、真剣に議論を始めたことへの感謝の意を述べた。

一宮町と同様に海を財産とする鎌倉から来たという参加者は、コメントの中で海岸のある他の町と比較しても一宮町にしかないもの、それはサーフィンの世界大会が開催される“波”だ。この一宮の波を求めて全国から移住者、来訪者が集まってくる。こんな小さな町で世界大会が過去に何度も開催されているというのは驚異的なことで、町の生き残りを考えるとそれらのサーフィンによる経済効果は否めないものと、防災に重点を置く意見には警告を鳴らした。

一宮町町長は、住民の声を広く取り入れることを念頭に、学識専門家を含めた協議体を、町を中心として立ち上げることを決定したとこの説明会で発表しており、今後官民学協働による開かれた場で議論が進められる。『成功のカギ』、それは地元住民とここに集まるサーファー達が情報を蓄積し、学び、そして責任を持って声を上げる姿勢、これに尽きるであろう。

我々「一宮の海岸環境を考える会」は、その発信拠点としての活動を行っていく意向です。

そして、清野氏が訴えた海岸線の変化に関して専門家による分析を進めるために、サーファーや海岸利用者しか知り得ない写真データや情報を広く集積していく準備に取り掛かります。ぜひとも皆様のご協力ご支援をお願い申し上げます。

Comments (4)

 

  1. より:

    質問させてください。

    海岸線の変化を写真に残し、集積させると、
    どういった事に活かされるのでしょうか?
    教えて頂けますでしょうか。

    宜しくお願い致します。

  2. 一宮の海岸環境を考える会 より:

    毎日海と接している人にしか解らないような変化等があります。工事の結果が予想通りなっているのか、そうでないのか、違いがあれば専門のエンジニアに調査を依頼することも可能だとの話がありました。具体的に誰にどのような形でそれらの情報を伝えればよいのかは協議会が発足したら決まってくると思います。詳細が決まりましたらホームページでお知らせいたします。

  3. より:

    了解致しました。
    レスありがとうござします。
    詳細情報(写真の撮り方等)をお待ちしております。
    宜しくお願いします。

  4. 一宮の海岸環境を考える会 より:

    今後、海岸管理者が海岸環境を設計する上で、
    一宮海岸のどこにどういう波が立って、どういう流れがあって、構造物で何が変化し、
    何が壊れたのかを知るための資料だそうです。
    ランドマークになるような陸側の目印の定点写真が望ましいそうです。
    また、過去の波がわかる情報があると役に立つそうです。
    工事前の波の情報など世界選手権が行なわれる波がどうして立つのかを
    海岸管理者に理解してもらえるようにする資料があれば一番よいのですが。

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